超微量分注、3456ウェルプレートのHTSを実現した、かつての非常識
第6回 超微量分注、3456ウェルプレートのHTSを実現した、かつての非常識
第一三共RDノバーレ株式会社
生物評価研究部 ライブラリー資源グループ
鈴木 友美
ハイスループットスクリーニング(以下、HTS)と言えば、みなさんは1枚のプレートにどれくらいのサンプル数と溶液量を想像するだろうか。
かれこれ30年くらい前、HTSという言葉が囁かれ始めたころは、96穴プレートを使い、数μLの化合物溶液に対して100 μL前後のアッセイボリュームでのスクリーニングが普通であった。これくらいなら手作業で分注し、目視チェックもできていた。
それが10年もしないうちに384穴プレート、さらに5年~10年で1536穴プレートへと、プレート1枚あたりの処理件数は16倍になった。DISCユニットでは、今や、3456穴プレートでスクリーニングを行うことも普通となった。
それに伴い、アッセイボリュームはどんどんコンパクトになり、数nLの化合物溶液に対して数μLのアッセイボリュームでおこなっている。30年前と比べると、約100分の1での量で化合物評価が可能となったと言える。なんと、かつての分注誤差範囲以下の液量で勝負しているのである。ここまでくると、老眼や肉体の衰えがなくても正確なマニュアル操作など不可能。素直に負け(老化のせいではない)を認め、すっかり機械にお願いしている。
これを可能にしたのは、高感度検出系・装置の進歩もさることながら、分注技術の進化が大きく貢献している。その一つが、Acoustic Liquid Handling Technologyという方法である。底面から1ウェルごとに超音波を当て、液滴を上に飛ばして分注することで超微量(nL)分注を可能にした技術である。「分注にはマイクロピペットとチップ」という既成概念を覆し、サンプルに接触することなく分注するという画期的なアイデアであった。また、分注にまつわる様々な問題(クロスコンタミネーション、廃棄物、環境負荷など)も一気に解消された。
Acoustic Liquid Handling Technologyの特筆すべき点は、分注される側のプレートをひっくり返す*という非常識をやってのけたことである。超微量分注だからこそ可能となった方法だが、最初にそれに気が付いた人はすごいと思いませんか? 状況の変化によって、かつての非常識(不可能だったこと)は今の常識(可能)になる、まさにそれを実感した瞬間であった。
皆さんの周りにも、いずれ常識となる非常識が眠っているかもしれない。慣習にとらわれることなく、常に柔軟なものの見方を心掛け、歴史的な革新に繋げたいものである。
*(参照動画、1:41)https://www.id3disc.jp/disc-unit/
関連ページ
・DISCユニット事業内容
https://www.id3disc.jp/disc-unit/
・DISCユニットのHTS技術:2.5 nLの超微量分注、最大3456ウェルプレートでのHTSが可能です。